脳のはなし

働き盛りの睡眠不足は脳の海馬の衰えに

2018年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、平均睡眠時間は、成人の約4割が6時間未満という報告もあります。年齢別にみると男女ともに40代が最も睡眠不足で、男性48.5%、女性52.4%の人が6時間未満の睡眠しかとれていないという状況。データからも日本人の睡眠不足は深刻化しています。

なぜ睡眠不足が問題になるかというと、認知症の発症リスクが高まるといわれているからです。

アルツハイマー型認知症は、脳内に「アミロイドβ」という物質が沈着することで、脳の神経細胞を死滅させて発症します。「アミロイトβ」は脳が活動したときに排出される老廃物で、前頭前野など大脳のほとんどが休んでいるノンレム睡眠の時に排出されています。

脳は眠っている間に休息をとり、「アミロイドβ」など老廃物を排出し、疲れを回復するなど脳のメンテナンスを行っていというわけです。

働き盛りの40~50代は、仕事に追われ疲れているのに眠らなかったり、徹夜をしたりすることがあります。しかしこうした睡眠不足がノンレム睡眠の時間が短くし、「アミロイドβ」の蓄積を進ませて、脳の機能低下だけでなく、認知症のリスクを高めていることになります。認知症が進むと大脳の海馬の部分が萎縮して、昔のことは思い出せるのに、新しい記憶をとどめておくことが難しくなる、海馬の機能不全の症状としてあらわれるのです。

ただし、認知症予防ためには、長く眠ればいいというわけではありません。40歳を過ぎると加齢により睡眠時間が短く浅くなります。

大切なのは、質のよい睡眠をとる努力をすることです。そのためにできることとして適度な運動、寝る前3時間前に食事をすませる、過度なアルコール摂取を控えるなどを実践して、6〜7時間くらいの質のいい睡眠をとるように規則正しい生活を心がけることが重要です。

グラフ)1日の平均睡眠時間(20歳以上、性・年齢別階級)
出典:2018年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)

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