脳のはなし

ミラーニューロンで能力&思考が変わる

道具の使い方やスポーツの技術など、人は何か新しいことを覚えるとき、まずはできる人にお手本を見せてもらい、それを見て、まねることで習得が早くなります。

「百聞は一見に如かず」とはまさしくそのとおりで、文字や言葉だけで説明されるよりも、目の前でやり方をみせてもらうほうがずっとわかりやすいものです。

このとき、脳内で活発に活動するのが、「ミラーシステム」ではないかとパルマ大学(イタリア)のリゾラッティ博士らが唱えています。ミラーシステムは、目の前のことを自分の脳に写し取る、まさしく“脳の鏡”といえる神経細胞ネットワークのこと。目の前の動きを、自分が実際にやっているかのようにミラーシステムが脳内で処理することで、新しいことを自ら再現できるようになると考えられています。

ときどき「見るだけでまねして覚えてしまう」といった能力を発揮する人がいますが、これはミラーシステムの高度な働きによるものです。

スポーツに限らず、あらゆる学習において、ミラーシステムは働いているとの主張があります。たとえば、「人との会話が苦手…」という場合は、会話上手な人がどんな表情や言葉で人とコミュニケーションをしているのかをよく観察することで、その能力を自分の脳内へ写し取り、学習して高めることが可能、ということです。

人とのコミュニケーションだけでなく、あらゆる情報をミラーニューロンは処理するとの考えもあります。どんな本を読み、どんな人とSNSで交流しているのか。どんな環境でどんな情報を自分の“脳の鏡”に映しているのかで、人はその能力や思考、感情に大きな違いが生まれます。

自分が望む自分になるために、何を“脳の鏡”に映すかを意識しながら選択することをおすすめします。

参考 Marco Iacoboni, Roger P. Woods, Marcel Brass, Harold Bekkering, John C. Mazziotta, Giacomo Rizzolatti, Cortical Mechanisms of Human Imitation, Science 286:5449(1999)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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