脳のはなし

森林・自然が認知機能を回復させる!?

ハイキングや海水浴など、夏はアウトドアを存分に楽しめる季節。週末や長期休みを海や山など、自然の中で過ごすことで、心身共にリフレッシュすることは、誰もが経験したことがあるでしょう。実は、自然の中で過ごすことが脳を非常に望ましい状態にすることは、科学的にも明らかになっています。

公園や海を散歩しているときに、斬新なアイデアや、これまで考え付かなかったような問題解決法が頭に浮かんだ、という経験を持つ人は多いことでしょう。

これは偶然ではなく、自然によって能力が引き出された結果であることを科学的に明らかにしたのが、アメリカ・ユタ大学の認知心理学者、デビット・ストレイヤー教授でした。

彼の研究によると、男女56人の参加者に4日間、自然豊かな環境でキャンプをしてもらい、その前後で認知スキルをテストしたところ、自然豊かな環境で過ごした後には創造性が50%も向上することが分かりました。

同教授は「自然環境に長時間触れることと、日常で没頭し過ぎているテクノロジーからの解放によって、複雑な認知能力が促進されると考えられる」と述べています。

そもそも人類は、その歴史をみれば、99.9%の間、自然豊かな環境のなかで生きてきました。現代のように、都心でテクノロジーに囲まれた環境に身を置きはじめたのは、歴史をみればつい最近のこと。そのため、自然環境の中にいてこそ、人類の能力は十分に発揮されるというのは、十分に考えられることです。

テレワークが広がりつつある今、時には公園の緑や空が見える環境のなかでゆっくりと休息をとりながら仕事をするのも、斬新なアイデアを生むことにつながるかもしれません。

参考:Ruth Ann Atchley,David L.Strayer,Paul Atchley“Creativity in the Wild: Improving Creative Reasoning through Immersion in Natural Settings”「PLOS ONE」December 12, 2012

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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