脳のはなし

中年期のパソコン使用が軽度認知障害(MCI)の予防に

コロナ禍の影響でリモートワークになり、オンライン会議などでパソコンの使用頻度が増えた人も多いのではないでしょうか。

アメリカの総合病院「メイヨークリニック」の研究チームが、中年期と高齢期のパソコンやゲームなどの活動の頻度が高い人ほど、軽度認知障害(MCI)の予防効果があることを2019年に医学誌『Neurology』で発表しました。

この研究は、認知機能が正常な70歳以上の男女2000人を対象に、脳に刺激を与える5つの活動とMCIの発症リスクの関係について調べたものです。

まず参加者に、自身の過去を振り返って、50~65歳の中年期と、66歳以上の高齢期に、「読書」「パソコン作業」「社会参加(友人との交流など)」「ゲーム(アナログ)」「ハンドクラフト(手工芸作業)」の5つの活動をどのくらいの頻度で行ったかを調査しました。

検証は、15か月ごとに、記憶力など認知機能の検査を約5年に渡り実施。その間に532人がMCIを発症しました。

研究の結果、中年期にパソコンを使用していた人は使用していない人を比べ、MCIの発症リスクが48%低いことが明らかになりました。同様に、中年期と高齢期にパソコンを使用していた人では37%低下し、高齢期に使用していた人でも30%低下していることから、「パソコン作業」がどの世代でもMCI発症リスクの低下に関係している可能性があることがわかりました。

また、ほかの活動の結果は、中年期と高齢期に「社会参加」と「ゲーム」をしていた人はMCIの発症リスクが20%低下。「ハンドクラフト」では、高齢期のみで発症リスクが42%低くなっていました。さらに、高齢期での「読書」「パソコン作業」などの活動数が増えれば増えるほど、MCIの発症リスクが28~56%も低下する結果が示されました。

ただし、この調査は観察研究のため活動がMCIの予防手段とは必ずしも証明できないとも述べられています。

とはいえ、中年期や高齢期に「パソコン作業」など脳を刺激する様々な活動をすることは、MCI予防に役立つと言えるのではないでしょうか。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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