脳のはなし

「マルチタスク」が脳に及ぼす悪影響とは

電話をしながらパソコンで資料を作成したり、会議に参加しながらメールを返信したり。同時に二つの作業を行う「マルチタスク」は、現代のビジネスパーソンにとってはごく当たり前のことでしょう。テレワークが定着した今は、音楽を聴きながら、スマホを操作しながら仕事をしている人も少なくないようです。

しかし、一見バリバリと仕事をこなしているように見えても、こうしたマルチタスクは脳科学的には非常に非効率的であるといわざるを得ません。

実は、脳は同時に2つのタスクを行うことが非常に苦手なのです。電話の応対をしながら資料を作成していても、それは同時に行われているのではなく、2つの作業に必要な脳の働きを高速で切り替えながら行っているのです。そのため、切り替えのたびに必要な記憶を呼び戻そうとして集中力が切れやすくなってしまうなど、脳に余計な負荷がかかり、エネルギーや時間をムダ使いしてしまうことになります。

こうしたマルチタスクが脳の働きにどんな影響を与えるかについて、東北大学の研究チームは大規模な調査を行っています。仙台市の市立中学生2万4000人を対象に行った調査では、勉強をしながらスマホで複数のアプリを捜査している生徒は、テスト成績が低い傾向があることが分かっています。そして、勉強中にスマホのアプリを「ほとんど使わない」というグループだけが、テストの平均点を超えていました。

つまり、勉強中のマルチタスクは集中力を削ぎ、同じ時間だけ学習してもその効果を少なくしてしまうということです。

これは、仕事においても同じことが言えるでしょう。早く、効率よく、そしてミスなく仕事を行うためには、一つの作業に集中することが必要です。

オフィスでは電話に応対したり、同僚や上司からの声かけに答えたりと、自分ではコントロールができないこともあるでしょう。しかし、メールのチェックや返信、各タスクのスケジュール調整などは、コントロールが可能です。できる限り1つのタスクに集中して取り組めるように意識することをおすすめします。

頻繁なタスクの切り替えがなくなれば脳の疲れも軽減され、ストレスが軽くなることも期待できるでしょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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