脳のはなし

AIで認知機能低下患者の顔を見分けることに成功

東京大学医学部附属病院老年科と、東京都健康長寿医療センター、東京大学高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センターの研究グループが、AI(人工知能)を使って、認知機能が低下した患者と健常者の顔を写真だけで見分けることに世界で初めて成功したことを、2021年にアメリカの科学誌『Aging』で発表しました。

この研究は、東京大学医学部附属病院を受診するもの忘れを訴える患者と、同大学のコフォート研究の参加者の中から同意を得た人の正面の表情のない顔写真を使って、認知機能の低下を示すグループ121名と、正常なグループ117名の識別ができるか、AIワークステーション(高度なGPUを搭載した人工知能)で解析したものです。

その結果、何種類も試した中で最も成績がよかったAIモデルは、感度87.31%、特異度94.57%、正答率92.56%と高い識別能を示すことがわかりました。さらに、年齢の影響力を少なくするために、年齢で2つのグループに分けて解析したところ、どちらのグループも良好な成績だったことも明らかになりました。

今回の研究は人数が限られていることから、認知機能が低下した患者にすぐ応用するのは難しいものの、顔写真を集めてAIに学習させることができれば、将来的にはAIを用いて顔写真による認知機能低下を識別できることが期待されます。

認知症診断のための検査は様々なものがありますが、時間がかかるものや高額なものもあるため、顔写真で識別できるようになると、時間もかからない安価な検査方法として注目されるのではないでしょうか。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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