脳のはなし

もの忘れを補う“イメージング記憶法”

買い物へ行って「あれ?何を買うんだっけ?」と思い出せなくなったり、人の名前が出てこなかったり…ちょっとしたもの忘れは誰にでもあるものですが、加齢するにしたがって、その傾向は多くの場合で強くなります。

作業や動作のために一時的に必要な情報を記憶、処理する能力を「ワーキングメモリー」と言いますが、この能力が低下すると記憶力も衰えていきます。記憶力は健常者においても低下していきますが、認知症の患者の場合はこの低下する速度が著しく、生活に支障がでてしまうことになります。

しかし、いくつになってもちょっとしたコツで物覚えをよくすることは可能です。たとえば、カレーをつくるために必要な材料を買いにいくとき、「じゃがいも」「ニンジン」「豚肉」を覚えたいとします。これをひとつひとつ言葉として覚えると、これまで通り忘れがちですが、すべての材料を使った一皿のカレーの映像を脳内で描くと、この3つが「カレー」というイメージでひとくくりになって、記憶されやすくなるのです。

絵を描くことで、ワーキングメモリーを強化させる。これを明らかにした実験が、国立研究開発法人情報通信研究機構の研究グループです。研究では、高齢者に記憶する単語を最初は実際に絵に描いてもらい、徐々に心のなかでイメージとして描いてもらったところ、脳内で視覚・空間的処理が促進されるようになることが分かりました。

つまり、ワーキングメモリーを補う形で、視覚・空間的処理能力が働くようになり、より効果的に記憶できるようになったことが、示唆されたのです。

もの忘れが増えてきた…と感じたら、覚えたいものを絵として覚える習慣をつけてみましょう。新たな記憶補助装置を目覚めさせるきっかけになるかもしれません。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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