脳のはなし

脳をエネルギーで満たす“魔法の神経伝達物質”とは?

「頭がボーっとして仕事がまったくはかどらない」「特に理由もないのに、気持ちが落ち込んですっきりしない…」「すぐに気が散ってしまって、集中力が続かない!」
そんな状態が長く続いている、頻繁に起こっているとしたら、それは、脳のエネルギー代謝に問題があるせいかもしれません。

東京都医学総合研究所の昨今の研究によって、動物を睡眠から覚醒させる働きを持つ「セロトニン神経」が、脳のエネルギー代謝活動を調節していることが分かりました。

セロトニン神経は、覚醒のほか、気分や記憶の調節にも関与している神経です。

このセロトニン神経が、動物が睡眠から目覚める際に、脳を働かせるエネルギー物質である「ATP:アデノシン三リン酸」の細胞内濃度を増加させる機能があることが、分かったのです。
つまり、私たちは覚醒前に脳にエネルギーが十分にチャージされることで、スッキリと目覚め、脳をキビキビと働かせることができるというわけです。

朝から目覚めが悪かったり、頭がボーっとしたり…ということは、このエネルギーチャージがスムーズに行われていない可能性があります。

でも、大丈夫、対策はあります。セロトニン神経を活性化させる方法については、ある程度分かっています。
一つは、日光を浴びること。朝起きたらすぐにカーテンを開けましょう。できれば5~10分ほど、外を散歩したり、ベランダで体操などをすると理想的です。適度な運動も、セロトニン神経の活性化につながります。

もう一つは、朝ごはんをしっかり食べることです。咀嚼をすることがセロトニン神経の活性化につながるうえ、朝食から摂るタンパク質はセロトニン神経から分泌される神経伝達物質「セロトニン」の材料になるので、一石二鳥です。

そして当然ながら、規則正しく十分な睡眠時間を確保することも重要です。
セロトニンは「幸せホルモン」とも言われるほど、心の安定にも深く関連している物質です。脳にエネルギーを満たすと同時に、心の安定も得るために、先に述べた生活習慣をぜひ根付かせていきましょう。

参考:https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)02103-4

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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