脳のはなし

もの忘れと認知症は違うもの

40代をすぎると、多くの人は、いわゆる「もの忘れ」を自覚します。例えば、「人の名前がなかなか出てこない」「昨日食べたランチが思い出せない」「2階へ行ったときに何をしに来たか忘れてしまう」などです。もの忘れが増えてくるにつれ、認知症が心配になる方も多くなります。

内閣府の資料(65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率※)によると、2012年の認知症高齢者数は462万人で65歳以上の約7人に1人の有病率(15%)でした。それが2025年には675〜730万人に増えると推計され、約5人に1人になるという研究結果が出ています。

グラフ
※65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業/九州大学二宮教授)より内閣府作成

前述したような、「もの忘れ」は加齢に伴う脳の働きの衰えですが、認知症の心配はあまりありません。同じ「もの忘れ」でも、体験そのものを忘れてしまう、例えば「人と会ったこと自体が思い出せない」「ランチを食べたことが思いさせない」などは、認知症の初期によくある症状なので注意が必要です。

加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れは、最初の頃は区別がつきにくいことも多いのですが、次第に差がはっきりとしてきます。

以下は、認知症ともの忘れの特徴的な違いです。認知症は早期に発見して、少しでも早く治療をスタートするほど治療効果が出やすいので、その違いを知っておくといいですね。

加齢からくるもの忘れ 認知症によるもの忘れ
体験の一部を忘れる 体験そのものを忘れる
忘れたことを自覚している 忘れたことがわからない
何を食べたか忘れる 食べたこと自体を忘れる
料理の手順を間違える 味付けの仕方が判断できなくなる
日付や曜日を間違える 日付や曜日がわからなくなる
物をなくしたときに探そうとする 物をなくしたら誰かに盗られたと思う
間違いを指摘すると謝る 間違いを指摘すると作り話をして取り繕おうとする
買い物へ行って買い忘れをする 買い物に行ったことを忘れて、また買い物へ行く

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