脳のはなし

トレーニングすることで高齢者の事故の予防は可能?

警視庁交通総務課統計「違反別にみた高齢運転者交通事故発生状況」で最も多いのが「安全不確認」、ついで「交差点安全進行」「前方不注意」です。高齢ドライバーによる交通事故の原因は、脇見や考えごとなどによる、「発見の遅れ」が最も多く、81.5%という結果でした。

運転には、交通状況の危険を察知する力、危険を避けようとする判断力、判断したことを瞬時に操作する能力といった、高度な認知機能が必要です。けれど加齢とともに認知機能は衰えるため、高齢者自身は安全運転を心がけているつもりでも、客観的に見ると、安全運転とは言えないこともあるようです。

今後も高齢化社会は進み、高齢者の免許保有率はさらに増えていきます。運転免許証の自主返納を促せば、交通事故の予防にはなるかもしれませんが、高齢者のクオリティーオブ・ライフ(生活の質)の観点からは何の解決にもなりません。
車が生活の必需品である地域では、高齢者の自立を妨げ生活環境や行動範囲を狭めることになり、心身に大きく影響するからです。

では、高齢化社会の事故予防はどのようにすればいいのでしょう。取り組みのひとつに、高齢者に教育を行うことで事故を予防し、高齢者が安心して運転できるように支援するための安全運転プログラムの開発があります。

これは国立長寿医療研究センター予防老年学研究部のプログラムで、MCI(軽度認知障害)の高齢者を対象に、3カ月にわたり実車トレーニングを10回、ドライブシミュレーターとビジョントレーニングを10回のプログラムを実施するものです。プログラム実施後は、高齢者の安全運転技能が大きく向上し、その効果は1年を経過しても保持できるということが明らかになったのです。今後、交通事故予防に役立つかを引き続き検証する必要はあるものの、高齢者は安全運転技能を向上させる能力があることがわかりました。

ただ、交通事故は高齢者だけの問題ではありません。どの世代も事故を起こさないとは、限らないからです。40〜50代から、将来を見据えて安全運転技能の維持、向上できるようにトレーニングすることが大切なのかもしれません。

国立長寿医療研究センター予防老年学研究部のプログラム

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