脳のはなし

記憶の定着を促すエビングハウス忘却曲線とは

中高年になると記憶する作業がなかなかはかどらず、資格試験などに必要な内容が覚えられないということがあります。脳に記憶を定着させるには繰り返し覚えることが大切なのですが、効率的に学ぶための理論、忘却曲線というのをご存知でしょうか。

代表的なものに、エビングハウス忘却曲線とカナダのウォータールー大学の忘却曲線の研究があります。これらの忘却曲線は最近も注目されていて、忘却曲線を参考に高校生が考案した「エビングハウスフセン」という学習アイテムが発売されています。この付箋は、効果的な復習のタイミングを可視化できる画期的なアイテムとして、 SNSやテレビなどで話題になっているようです。

エビングハウス忘却曲線とは、約100年前にドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが発表した学習と忘却のプロセスについての研究です。無意味な音節の暗記を様々な時間間隔で繰り返しテストし、1時間後で44%、1日後26%、1週間後23% 、1か月後21%などと節約率を記録し、グラフ化したものです。節約率とは忘れてしまう確率ではなく、一度学習したものを再び記憶するまでにどれくらい時間を節約できたかを表す数値です。1日の間に急激な忘却が起こるものの、時間をかけて覚えたものは、忘却の速度が遅くなることを明らかにしています。

そして、この忘却曲線に関連した研究に、ウォータールー大学の研究報告があります。
この研究は、学生が1時間の講義を受けた後に24時間以内に10分間復習するとほぼ100%記憶が戻り、1週間後に2回目の復習を行うと5分で記憶が戻り、30日後に3回目の復習を行うと2~4分行うと記憶が取り戻せるというものです。研究結果から、復習のタイミングは、24時間以内、1週間後、1か月後と継続することが望ましいと報告されています。

エビングハウスと、ウォータールー大学のどちらの研究報告も、繰り返し反復することと、タイミングが重要であることが示されています。資格試験などで覚えたことを忘れてしまう、なかなか覚えられないという人は、これらの忘却曲線を参考に学習のタイミングを計画してみるのもいいのではないでしょうか。

覚えられない、すぐ忘れてしまう場合は、一度に覚えようとはせず、「24時間以内」「1週間後」「1か月後」と3回に分けて復習することが効果的に、学習内容を長期的な記憶に結びつけられるようです。

出典:カナダ ウォータールー大学

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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