【加齢と運転】運転と前頭前野
車の運転には、脳の認知機能の働きが欠かせません。
特に、運転中に必要となる認知機能は、主に次の3つが挙げられます。
- 認知・判断力:人や他の車の流れ、信号や道路標識といった周囲の状況を認知し、正しい判断をすることができる
- 注意力:人、車、自転車などの飛び出しや障害物などに瞬時に気付き、注意を払うことができる
- 予測力:周囲の車や人の動き、走行時間などを正しく予測することができる
これらの働きを担っているのは、脳のなかでも、最も高次な働きを行う部分である「前頭前野」です。
前頭前野は大脳の一部で、おでこのちょうど裏側に位置しており、記憶や思考、集中力といった、人間らしい活動のほとんどを担っています。

実は、運転中の脳は、基本的にリラックス状態になっており、前頭前野もさほど活動していないことが分かっています。特に、いつも乗っている車でよく知っている道を走行しているときは、「いつもの作業」をするだけなので、脳もリラックスしているのです。
逆に、歩行者や車がゆきかう交差点や、慎重なハンドルさばきが必要になるカーブを走行するときには脳血流が増加し、前頭前野は一気に活性化します。知らない道や慎重な操作をするための情報処理をしなければいけないため、大忙しになるからです。
知っている道の運転はさほど疲れないけど、慣れない道を運転したあとはどっと疲れる…というのは、こういう理由からです。
いずれにしても、いつまでも安全に運転するためには、脳の認知機能を健全に保つことが欠かせません。
ドライバーの皆さんは、体の健康とともに、脳の健康維持も常に心がけることをおすすめします。
川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者