【認知症】認知症リスク12と予防の最前線
認知症患者が運転をすることは、法律で禁止されていますが、最近では認知機能の衰えを自覚する前に、自ら免許を返納する人も増えてきました。
しかし、国立長寿医療研究センターの研究によると、運転を中止した高齢者は、運転を継続した高齢者と比べて要介護状態になるリスクが約8倍に高まることが分かっています。
運転すること自体が認知機能の維持に役立っている可能性もありますが、車による移動で行動範囲が広がったり、外出して社会と交流する意欲が維持されやすいということも、加齢のスピードを緩やかにする要因になっていると考えられます。

できることなら、認知機能をできる限り維持することで、認知症を予防することを心掛けたいもの。
昨今では、認知症を予防するための研究がどんどん進んでおり、2020年には「認知症発症に関わる12のリスク要因とそれぞれの関係性」が明らかにされました。
世界的な認知症研究の専門家が集まった「ランセット委員会」がまとめ、科学雑誌『Lancet(ランセット)』に掲載されたその内容は、以下のようなものです。
【若年期(45歳未満)のリスク】
①教育歴(7%)
【中年期(45~65歳未満)のリスク】
- 難聴
- 頭部外傷
- 高血圧
②難聴(8%)
③頭部外傷(3%)
④高血圧(2%)
⑤過剰飲酒(1%)
⑥肥満(1%)
【高齢期(66歳以上)のリスク】
⑦喫煙(5%)
⑧抑うつ(4%)
⑨社会的孤立(4%)
⑩運動不足(2%)
⑪大気汚染(2%)
⑫糖尿病(1%)
これら12のライフステージ別の認知症リスク因子をすべて合計すると、40%になります。つまり、これらをうまく避けていけば、認知症のリスクを4割も減らすことができるというわけです。
見ての通り、12のリスク要因は、昔から「健康のために控えよう、気を付けよう」といわれているものばかり。健康的な生活を心がけ、社会と積極的に関わっていくことが、認知症を遠ざけ、長く安全に車を運転できることにつながるということです。
川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者