【認知症】難聴・社会的孤独・抑うつ

【認知症】難聴・社会的孤独・抑うつ

【認知症】難聴・社会的孤独・抑うつ

 2020年、科学雑誌『Lancet(ランセット)』で発表された、「認知症発症に関わる12のリスク要因」の中には、過剰飲酒や肥満、糖尿病など、これまでもリスクが高いとみられていた要因が含まれていましたが、なかには「意外!」ととらえられるものもありました。

 それが、「難聴」や「社会的孤独」「抑うつ」などです。

 難聴は、認知症発症リスクを1.9倍にも高めることが、同発表では指摘されています。

 難聴は、直接的に脳に影響を与えるわけではありません。耳が良く聞こえないことから、他者との会話を避けるようになったり、自然な物音や音楽などといった音の刺激が脳へ届くことが少なくなることで、認知機能に悪影響が現れるのです。

 聴力の衰えを感じた時には、大音量やイヤホンは極力避けて耳の負担を軽減したり、補聴器を利用するなどの対策が必要です。

 社会的孤立の場合、認知症発症リスクは1.6倍に高まることが指摘されています。昨今では、孤独は死亡率まで高めることも分かってきました。

 人間は社会的動物ですから、人と対面し、顔を見たり、言葉を交わすことで、脳が強く活性化することが分かっています。コミュニケーションは脳のクスリというわけです。

 以前からやってみたかった趣味を見つけてコミュニティに参加したり、ボランティア活動を通じて地域の人たちと交流する機会を持ったり。そうした活動を積極的に行うことで、認知機能を維持することにつながります。

 また、高齢期に抑うつを発症すると、認知症発症リスクは1.9倍になることも分かっています。やる気が出ない、気持ちが落ち込む…といった抑うつの症状は、認知症の症状と似ているため、いずれにしても早めに病院を受診して、適切な治療を受けることが重要です。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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