【合格脳にするための基礎知識③】
「計算&記憶課題」で多彩な能力が伸びる

簡単な計算を速く解いたり、単純な記号や単語をなるべく早く、たくさん覚えたり。そんな計算や記憶する作業で脳はバリバリ鍛えられる。そして、結果的に入試で勝ち抜ける「合格する脳」になる。前回は、そんなお話をしましたね。
「でも……入試では計算が早いだけ、記憶力がいいだけじゃダメなんじゃないの?」と疑問を抱きたくなります。その疑問は当然のことですね。応用力や思考力、問題を解決したり、新しいアイデアを考えられる力も問われるよ、というお話もこれまでにしてきましたから。
でも、心配しないで大丈夫! 実は、簡単な計算を全力で速く解いたり、単純な記号をたくさん覚えて脳に高速ネットワークが搭載されると、不思議な現象が脳に起こることが、私の研究で分かっています。
その現象は、「転移の効果(トランスファーエフェクト)」といいます。
具体的には、例えば簡単な計算をたくさん速く解いたり、声に出して読んだり、単純な記号を覚えたりすることを続けると、計算や覚えることだけでなく、応用力や思考力、アイデアを生み出す力までグングン上がる現象が起こる……というわけです。
この不思議な現象は、これを読んでいるすべてのみなさんの脳にも発生する可能性を秘めているのです。
また、計算や暗記で脳をトレーニングすることは、高速ネットワークだけでなく、一時的に頭の中に物事を記憶する「短期記憶(ワーキングメモリー)を伸ばすことにもつながります。これは、年号や人物の名前を覚える長期記憶とは異なる能力であり、受験を格段に優位にしてくれる力です。
例えば、文章題を読んで問に答える際、課題文を読み返さなくても頭の中で思い出し的確に答えることができるようになったり、回答の候補がいくつか浮かんだ場合にどの答えが、様々な条件に最もマッチしているか比較して正解を導いたり、論理的に段階を踏みながら回答を考えたりできるようになるのが、「ワーキングメモリーが優れている人」です。
頭の中にある作業机が一般の人よりもずっと大きく、広いため、ノートを一度ん何冊も広げてそれを見渡しながら問題を解くことができる…とイメージすると分かりやすいでしょう。
これは受験する上で、非常に強力な武器になることが、みなさんにも分かってもらえるでしょう。