2023.10.13
ガンマ波を活用した生活に溶け込む認知ケア
認知症や認知能力の治療にアプローチする新しい方法として注目されているのが、塩野義製薬株式会社とピクシーダストテクノロジーズ株式会社(PxDT)が共同開発している、「ガンマ波サウンド」を活用した認知機能ケアです。
「ガンマ波サウンド」は、テレビやラジオなどの音を独自のアルゴリズムにより、自然な40Hz変調音※1に加工した音のことです。この研究の「ガンマ波サウンド」は、毎日の生活の中で、聞くだけで認知機能をケアできる可能性がある画期的なものだと期待されています。
40Hzの周波数とは、ヒトが記憶や推論などの問題解決型の思考をしているときなどに現れる脳波「ガンマ波」と同じ帯域にあたります。認知機能障害が起きると、脳内で認知機能を発揮するのに必要な脳の特定のリズム活動(ガンマ波)が低下することなどが報告されています※2。またアメリカのノマサチューセッツ工科大学の研究グループが、ヒトを対象とした40Hz周期の音と光を用いた臨床試験においても、認知機能悪化や脳萎縮の抑制を示唆する研究結果※3が報告されているなど、40Hz音は世界的に注目を集めています。
ただ、これまでの研究で用いられた40Hz音は音声情報などを含めることのできない単調なパルス音であり、毎日長い時間聞き続けるには負担が大きく、日常生活の中に取り込みづらいという問題がありました。
このため、塩野義製薬とPxDTの研究グループは、「生活に溶け込む認知機能ケア」という共通コンセプトにもとづき「ガンマ波サウンド」を共同で開発。2社が中心となり、株式会社NTTドコモ、株式会社学研ココファン、SOMPOひまわり生命保険株式会社、三井不動産株式会社とも協同し、各社が持つ強みや特徴を生かした事業領域の中で認知症予防、認知機能改善の取り組みを進めていくということです。
2023年4月には、家庭のテレビの音をガンマ波サウンドに変調する技術を搭載した「Kikippa」が発売になっており、将来的に、ガンマ波サウンドの社会浸透と、新たな「認知機能ケア」のサービスが期待されています。

出典:塩野義製薬株式会社 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
※1
40Hz変調音とは、40Hzの正弦波のような周期関数を用いた振幅変調により加工した音を言います。
※2
Herrmann, C. S., & Demiralp, T. (2005). Human EEG gamma oscillations in neuropsychiatric disorders. Clinical neurophysiology, 116(12), 2719-2733.
※3
Chan, D. et al. (2022). Gamma frequency sensory stimulation in mild probable Alzheimer’s dementia patients: Results of feasibility and pilot studies. PLOS ONE 17, e0278412.
川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者
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