脳のはなし

飲酒で脳が萎縮する!?

「酒は百薬の長」ということわざがあるとおり、アルコールはこれまで「適量なら体によい」「ストレス解消に役立つ」と言われてきましたが、最近では旗色が悪くなってきています。

2018年8月、医学雑誌「Lanset」に「健康への悪影響を最小化するためには、飲酒量はゼロが良い」と結論づけられた論文が掲載され、大きな話題となりました。

さらに、オックスフォード大学とロンドン大学の研究チームも2017年に「アルコールの摂取量が増えるほど海馬の萎縮リスクは上昇する」と発表しました。

研究チームが平均年齢43歳の男女550人を対象に、アルコール摂取量と脳の変化をMRI検査で30年間追跡、解析したところ、アルコールを飲まないグループと比べると、適量飲酒のグループの海馬の萎縮リスクは3.4倍、多量飲酒のグループは5.8倍に高まることが判明しました。

海馬は、記憶を司る司令塔ともいえる非常に重要な器官で、その機能が衰えることで新しいことが覚えられなくなってしまいます。お酒を飲み過ぎた翌日、記憶がなくなる「ブラックアウト(一時的記憶喪失)」が起こるのは、アルコールの影響で海馬が働かなくなるため。

日常的にお酒を飲み過ぎることで、記憶喪失が一時的ではなく、慢性的になってしまう可能性があります。

海馬は高次な機能を持つ反面、非常に壊れやすく、繊細な器官でもあるのです。脳の健康を生涯保つためにも、日常的に飲酒する習慣を考え直す必要があるといえるでしょう。たまの楽しみ程度にすることが、繊細な海馬を生涯守ることにつながります。

参考:
Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study.BMJ 2017; 357

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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