脳のはなし

認知症患者の介護者は睡眠不足の傾向に

40、50代の中高年世代の中には、家族の介護をしている人も多いのではないでしょうか。

2019年の厚生労働白書によると、2020年の認知症の患者数は約675万人で、2050年には797万人に達すると予測されています。また、WHOによると2015年時点で世界の認知症患者数は約5000万人、毎年1000万人近くが新たに認知症を発症し、2050年には約1億3100万人に増加するという報告もあります。

認知症患者など高齢者の介護は、食事や入浴、身繕い、排泄などのサポートに時間がかかるため、介護者は身体的にも精神的にもかなりなストレスが伴います。そのストレスは要介護の段階が上がるにつれ、負担も増えていきます。

このことを裏づけるように、認知症患者の介護者は十分な睡眠を維持することが困難なことから、睡眠時間がかなり短くなっているという研究が発表されました。

この研究は、アメリカのベイラー大学の研究グループが認知症患者の介護者の睡眠時間と質についての35件の論文をもとに、調査されたものです。対象の介護者は3468人のうち76.8%が女性で、平均年齢は63.48歳でした。

介護者のグループと同年代の介護をしていない696人のグループと比べて、睡眠時間が週に2.42~3.50時間も短く、睡眠の質も悪いことが明らかになりました。

患者の介護による慢性的なストレスが睡眠不足に関連しているほか、認知症患者を介護するための夜間の目覚めも、介護者の睡眠の障害の一因となっている可能性があると研究グループは述べています。

ただその一方で、介護者が睡眠に関するケアを受けるこことで、睡眠の質が向上することも報告されています。朝日を浴びたり、日中の運動をしたりするなど規則正しい就寝時間を心がることで改善がみられたと言います。

睡眠不足は介護者の生活の質を落とすだけでなく、介護の質を落とす原因にもなりますから、介護者のケアの重要です。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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