脳のはなし

中学・高校生期と高齢期に運動習慣が、女性の骨粗鬆症リスクを低減

骨の強度が低下して、骨折しやすくなる骨の病気に骨粗鬆症があります。

日本の骨粗鬆症の有病率は、先進国の中でも高いことが知られています。高齢女性の要介護となる原因の多くは、骨折と転倒だと言われていて、その背景にある骨粗鬆症を予防することは重要な課題となっています。

2022年に順天堂大学大学院医学部医学研究科スポートロジーセンターの大学院生大塚光氏、田端宏樹研究員、田村好先任准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループが、中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣がある女性は、骨密度が高く、骨粗鬆症のリスクが低下することを明らかにし、医学誌『journal of Clinical Medicine』で発表しました。

この研究は都内在住の高齢者1,596人(女性915人、男性681人)を対象に、中学・高校時期の運動部活動や運動習慣の有無、現在の運動習慣があるかについて調査を行ったものです。

その結果、女性の股関節の骨密度は、中学・高校生期と高齢期の両方の運動習慣があるグループは、運動をしていないグループに比べて優位に高いことがわかりました。さらに中学・高校生期と高齢期の両方の運動習慣があるグループは、両時期に運動をしていないグループに比べ骨粗鬆症のリスクが35%も低いことがわかりました。

その一方で男性の骨粗鬆症の割合は女性と比べ低く、運動歴との有意な関連性は認められなかったと言います。

今回の研究では中学・高校生期と高齢期の両方の運動習慣の人だけでなく、高齢期の運動習慣も骨密度によい影響を与えることも報告されています。運動習慣がない人は、中高年からでも適度な運動習慣をスタートすることは、将来の骨粗鬆症を予防するために大事です。

また、骨粗鬆症など身体的機能の低下による歩行障害や転倒と、認知機能の低下は双方向に影響すると言われています。自力で動けなくなり寝たきりになると、会話も減り脳の刺激が少なくなるという悪循環に陥ります。この悪循環が認知低下を招き、認知症のリスクを高めると可能性があると考えられているからです。

骨粗鬆症のリスクが高い女性は、日頃から骨の栄養となるカルシウムやビタミンD、ビタミンKの摂取と、適度な運動で筋力アップを心がけ、骨粗鬆症だけでなく認知低下のリスクを減らすことが、大切です。

図)高齢女性における4つの運動グループ間の股関節の骨密度(T-score)の比較

中学・高校生期および高齢期の運動習慣が両方ある群(赤色バー)では、他の3のグループと比べて有意に骨密度が高い結果でした。

出典)順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンター

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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