脳のはなし

中程度の身体活動で女性の認知症の発症を抑制

2019年度の厚生労働省の報告によると、2050年の認知症患者数は、800~1000万人と推計されています。認知症の患者数の増加傾向は日本だけでなく、アメリカでも同様で、保健社会福祉省によると、現在500万人以上が認知症に罹患していて、その数は2050年までに2倍になると予想されています。また、男女比で見ると、男性より女性のほうが認知症の発症率が高いと言われています。

そんな中、女性の軽度の認知症や認知症の発症リスクと運動について研究結果を2023年にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校のハーバート・ワートハイム公衆衛生・人間長寿科学大学院の研究チームが、メディカルオンライン『The Journal of the Alzheimer's Association』で発表しました。

この研究は、65歳以上の女性1,277人に身体活動と座位行動の正確な測定値を取得するために加速度計を装着してもらい、最大7日間、毎日の活動を調べたものです。参加者の活動の平均は、1日あたりの歩数は3,216歩、軽度の身体活動の時間は276分、中程度から活発な身体活動の時間は45.5分、座ったまま過ごす時間は10.5時間でした。軽度の活動とは、例えば、家事やガーデニング、ウォーキングで、ウォーキングに早歩きを含めると中程度の運動になります。

研究の結果、中程度から激しい身体活動を1日あたり31分ずつ追加すると、軽度認知障害または認知症を発症するリスクが21%低下しました。また、毎日の歩数が 1,865 歩増えるごとに、認知症のリスクが 33%低下することがわかりました。つまり65歳以上の女性は、中程度以上の身体活動と毎日のウォーキングをより多く行うことで、軽度の認知障害や認知症を発症する可能性が低くなるということです。

研究グループは、認知症リスクの低下に必要な身体活動の量と強度に関する公表された情報はほとんどないため、この情報は臨床上、および公衆衛生上、重要だと述べています。

また、認知症の発症は症状が現れる20年以上前に始まることを考えると、高齢者の認知機能低下に気づいた時点からの介入や、認知症を遅らせ予防するための早期介入は不可欠。
高齢期にさしかかる前の30〜40代から、将来の認知症のリスクを下げるために、ウォーキングなどの中強度の活発な運動に積極的に取り組み、毎日の歩数を増やすことを奨励する必要であるとも報告しています。

出典:アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

※ ご自身の脳についてもっと知りたい方は、川島隆太博士監修の「脳のはなし 6日間無料メール講座」の受講をおすすめします。

  • 脳活動と日常生活の関係性
  • 現在脳科学でわかっている事実
  • 効果的な脳の鍛え方

などを6日間にわたってメールでお伝えします。
ご登録はこちらから