脳のはなし

就寝中の“よい香り”が記憶力を向上させる

クローゼットの防虫剤の香りから実家の自分の部屋を思い出したり。ハーブの香りで、友人との旅行の思い出がよみがえったり。そんな、ふとした香りをきっかけに、遠い昔の記憶を思い出した――そんな経験を持つ人は、少なくないでしょう。

そして、昨今の研究では、記憶に対して強い影響力をもつ香りが、高齢者の認知能力を向上させる可能性を持つことが分かりました。

アメリカのカリフォルニア大学が行った、60~85歳の高齢者45人を対象に行った研究によれば、6カ月間、就寝中に毎晩アロマオイルを香らせたところ、認知機能と神経機能の両方が向上することが判明。

記憶力を計るテストにおいても、そのパフォーマンスが向上していることが分かりました。脳画像で確認したところ、記憶や言語と関わる脳の部位「鉤状束(こうじょうそく)」が増加していることが確認されました。就寝中のよい香りが、脳の構造自体を変えてしまう。そんな驚くべきことが分かったわけです。

実験で使われたアロマオイルは、ローズ、オレンジ、ユーカリ、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダーの7種類だったそう。アロマディフューザーで毎晩2時間香らせるだけで“脳のクスリ”になるとは、なんとも不思議ですね。今晩から、自分の気に入った香りの中で就寝してみてはいかがでしょうか。

参考:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2023.1200448/full

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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