脳のはなし

80代でも認知症発症を遅らせる知的活動

これまで、アルツハイマー型認知症の発症を予防するには、40代くらいから予防をすることが大事だと言われてきました。けれども高齢者であっても脳の活性化によって、認知症の発症を遅らせる可能性があることを、2021年にアメリカの神経学会の研究グループが医学誌『Neurology』で発表しました。

この研究は、当時認知症と診断されていない平均年齢80歳の高齢者1978人を対象に、認知テストなどの検査を7年間継続し調査したものです。調査は認知テストのほか、小児期、成人期、中年期に行っていた知的活動の質問とともに、調査開始時の7つの活動についても調査しました。

7つの活動とは、「読書」「ボード、カードなどのゲーム」「運動」「ダンス」「楽器の演奏」「語学や数学などの学び」「アートの製作」についてです。それぞれの活動を行っている頻度に応じて、例えば「年に1回以下」はスコア1、「毎日または、ほぼ毎日」はスコア5と、5段階で評価しました。

調査の結果、知的活動の参加頻度が高いグループの平均スコアは4.0だった一方、知的活動の参加頻度が低いグループの平均スコアは2.1。調査期間中に、平均年齢89歳の457人がアルツハイマー型認知症と診断されました。

それぞれのグループの認知症発症年齢を比べると、知的活動が高いグループは平均94歳で発症し、知的活動が低いグループは平均89歳で発症したことがわかりました。

発症まで5年の差があることから、高齢者になってからでも脳を刺激する活動を多く行った人は、アルツハイマー型認知症の発症を遅らせることができる可能性があるのではないかと研究グループは述べています。

中高年期だけでなく、高齢になっても「読書」や「ゲーム」「楽器演奏」など知的活動を続けることは大切だということです。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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