脳のはなし

妊娠中に魚を食べると子どもの発達に好影響!

「魚を食べると頭が良くなる」という話を耳にしたことがある人は、多いことと思います。実際に、これまで数多くの研究でその可能性が示唆されてきました。一方で、それを否定する研究もあり、その是非について明確にはなっていないという現状がありました。

しかし昨今、約9万人の妊婦を対象とした大規模調査が「妊娠中の魚摂取は生まれた子どもの発達によい影響がある」と結論づけたのです。

富山大学の研究グループは「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いて、妊娠期の母親の魚の摂取量と、生まれた子どもたちの3歳時点の発達との関連について調査、分析を行いました。

エコチル調査とは、環境省が2010年度から全国約10万組の親子を対象に、胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が子どもの影響にどんな影響を与えているかを明らかにすることを目的に行われた調査のことです。

同研究グループはエコチル調査からの分析で、妊娠中に魚を多く摂取した母親の子どもは、生後半年と1歳の時点において、指先でものをつかむなどの「微細運動」、プロセスを考えながら行動するなどの「問題解決」、主体性と社会性などの「個人・社会」といった3つの領域において、発達の遅れが少なくなることを確認しました。

魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの「オメガ3脂肪酸」が多く含まれており、脳や神経の発達や脳機能を健全に働かせるために必須の栄養素といわれています。また、オメガ3脂肪酸には血管のつまりや炎症を防ぎ、心血管系疾患のリスクを下げるともいわれています。さらに、魚は良質なたんぱく源。まさに、老若男女にとって健康的恩恵が大きい食材の一つといえますね。

しかし、最近では下処理に手間がかかる魚介類は家庭料理では避けられるようで、国内の魚介消費量は年々減少しているといいます。下処理を引き受けてくれた魚屋が町から消えてしまったことも、魚離れを後押ししているといえるでしょう。

とはいえ、発達期の子どもに限らず、成人から高齢者まで多大な健康効果をもたらしてくれる魚は、毎日食卓に並べたいところ。最近は、サバやサンマの缶詰や、干物、ちくわやかまぼこなどの魚介類の加工食品も随分と進化して味も品質も良くなってきました。そうした便利な食品を利用しながら、魚を食べることを習慣にして、脳の健康アップにぜひ、役立ててください。

参考)
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2023.1267088/full

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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