脳のはなし

中年期に魚を食べる人ほど脳も健康に

アメリカの神経学会が中年期に魚などに含まれるn-3系脂肪酸(オメガ脂肪酸)を含む食品を食べている人は、ほとんど食べていない人に比べ、思考力が優れていて、脳も健康であることを2022年に医学誌『Neurology』で発表しました。n-3系脂肪酸は体内では生成できない必須脂肪酸のEPAとDPA、 DHAで、主にサーモンやイワシ、サバ、レイクトラウト、ビンナガマグロなどに含まれています。

これまでn-3系脂肪酸であるEPAと DHAなどには、認知能力を高める効果があることが報告されてきましたが、中年期に対する影響についての報告はありませんでした。

この研究は、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるための大規模な「フラミンガム心臓研究」の参加者の認知症や脳卒中を発症していない平均年齢46歳の男女2,183人を対象に行なったもの。参加者の血中のn-3系脂肪酸などの値を測定して、思考テスト(エピソード記憶・処理速度、抽象的な推論)を行い、さらにMRIを用いて脳の容積などを測定調べました。

その結果、魚を多く食べているグループではn-3系脂肪酸の血中の平均値が全脂肪酸の5.2%を占めましたが、魚をほとんど食べていないグループのn-3は、3.4%でした(n-3系脂肪酸の最高値は8%以上、4〜8%未満が中程度、4%未満は低値とされています)。

また、魚を食べているグループは、思考力テストの中でも抽象的な推論のテストでより平均スコアが高く、記憶に重要な役割を果たしている脳の海馬領域の平均容量も大きいことが明らかになりました。

これらの結果から、n-3系脂肪酸の中でもEPAと DHAを多く摂ることは、認知力の回復を向上させる可能性があることが示されました。また研究グループは、今後さらに詳しい研究を行い確かめる必要があるものの、平均年齢46歳の中年期で、EPAと DHAの摂取量が中程度でもこうした効果を期待できることは、今後の認知症予防にとって興味深いことだと述べています。

出典:アメリカ神経学会

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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