脳のはなし

育児は脳や健康にいい影響を与える

近年の研究で、育児と脳や健康への影響について複数の研究が発表されています。
脳には、子育ての情報に対して顕著に活性化する中枢神経ネットワークが存在することが明らかになっていて、育児する場面で使われる脳のネットワークは親性脳(おやせいのう)と呼ばれていて、男女ともにオムツ替えや授乳といった行為を通して、親としての脳や心が育まれていくと言われています。

別の研究では、2023年にスウェーデンのストックホルム大学の研究グループによって発表された育児参加している男性は、アルコールが及ぼす健康被害のリスクを大幅に抑えるという興味深い結果も出ています。この研究は、育児休業の政策の効果を調べるために、約22万人の男性を対象に調査したもの。

この政策とは、子どもが8歳になるまでに両親合わせて最大480日間の育児休業をとることを奨励するもので、男性も60日分の休暇をとれるというものです。その結果、政策の開始後、育児休業をとった男性はアルコールに関連する疾病のリスクが減少。アルコールに関連する入院は、子どもの生後2年までに34%減少し、その影響は18年後まで続くことが明らかになりました。

これらの結果から、研究グループは、男女平等の育児参加やワークライフバランスを促進することは、アルコールによる健康障害を減らすことにもつながることを示唆しています。

アルコールの過剰摂取は、脳を萎縮させて認知症を招くだけでなく、肝臓や膵臓に悪影響を及ぼし、糖尿病や肝硬変などの病気の原因になると言われています。アルコールの摂取量を減らすことがこうした健康被害を抑える最善の手段ではありますが、育児をすることで男性は脳に加えてアルコールの健康障害を減らす可能性が見出されたのかもしれません。

出典) 京都大学大学院教育学研究科ストックホルム大学

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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