脳のはなし

光刺激で不安が消える!?

暗い夜道を歩いていたり、はじめて訪れる場所や知らない人とコミュニケーションをとるときなど、多くの人は不安を感じるものです。はっきりとしたリスクが確認されていなくても、説明できない不安に襲われることは、私たちの生存本能からきているため、ある程度は必要な感情であると言えます。

しかし、常に過剰な不安を抱えた状態が長期間続いてしまうと、不安障害などの精神疾患に陥り、日常生活に支障が出ることも。

現在は不安障害の患者には抗不安薬の処方が主な治療法となっていますが、眠気や物忘れ、依存症といった副作用の問題があります。

そんななか、光刺激で不安が緩和されることを示唆する研究が、昨今、発表されました。
東北大学大学院生命科学科の研究チームが行ったのは、ガラス玉を床一面に敷き詰めて不安を誘発する環境にマウスを置き、不安が生じたときの脳の神経活動を観察するという研究です。

研究チームは、不安を感じる環境におかれたマウスの脳内では、「手綱核」という部位のアストロサイト(脳細胞の一種)が酸性化することを発見。そこで、光操作で人為的にアストロサイトのアルカリ化を促したところ、神経活動が弱まり、マウスの不安レベルが緩和されることが確認されたのです。

「光操作で不安レベルがコントロールできる」というこの新たな知見は、不安障害に対する薬物療法以外の治療法を開発する道が、新たに開かれたともいえます。生活に支障が出るほどの強すぎる不安につねづね悩まされている人にとっては、朗報となる新発見といえそうです。

参考)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/02/press20240214-02-astrocyte.html

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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