脳のはなし

VRゴーグルでアルツハイマー病を“超早期発見”!

認知症の新治療薬が登場したり、認知機能検査の開発も進む昨今では、認知症の予防・改善の最大のポイントとして、早期発見が最重要課題と位置づけられるようになりました。

認知症の前段階である「MCI(軽度認知障害)」を早期発見して適切な治療や予防を行えば、認知症の本格的な発症を遅らせることができることがわかってきたためです。

そうした背景から、現在では、認知症の早期発見法の開発に期待が高まっています。

そんな中、「VRゴーグルを用いた方法で、アルツハイマー発症前の脳の異常を検出した」と報告する研究が昨今発表され、注目を集めました。

学習院大学、藤田医科大学、滋賀医科大学、東京大学の研究チームが行ったのは、被験者にVRゴーグルを装着してもらい、仮想空間で三角形の経路を歩いてもらうという研究でした。被験者は最終的にスタート地点へ戻るなかで、歩いた距離や方向を正確に判断できるかどうかについて、評価されました。

その分析の結果、自分の移動距離や方向を記憶する「経路結合能」が低下している人の割合と、アルツハイマー病の兆候である脳の「嗅内野」の変異が出現している人の割合が一致することが分かったのです。
嗅内野は経路結合能を司っており、アルツハイマー病の初期段階に異常が出る部位といわれています。

VRゴーグルで仮想空間を歩くだけで認知症の兆候が発見できれば、実に簡単で低コスト、短時間な検査方法といえるでしょう。被験者への負担も少なく、一定の年齢以上の対象者へ定期検診を行うことも難しくありません。

VRゴーグルが自宅にあれば、オンラインで定期的に認知症診断を受けることができる。そんな時代もそう遠くない未来に実現されそうです。

参考)
https://academic.oup.com/braincomms/article/6/1/fcad359/7606401?login=true

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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