脳のはなし

“中年太り”は脳の指令!?代謝ダウン&過食の謎が解明

「若いころと運動量も食事量も変わっていないのに、どんどん体重が増えていく…」

40、50代になると、そんな実感が日に日に強まっている人が少なくないでしょう。実際に、厚生労働省が行っている「国民・栄養調査」によれば、20代の肥満率は男性23.0%、女性8.9%であるのに対し、40代になると男性39.7%、女性16.6%、50代では男性39.2%、女性20.7%と跳ね上がっています。

なぜ、加齢に伴って代謝が落ち「中年太り」になるのか?
これまで、その理由ははっきりと分かってはいませんでしたが、昨今の研究で「中年太りは脳の神経細胞の変性から来ていた」ということが判明したのです。

名古屋大学などの研究チームの発表によると、脳内の神経細胞が持つアンテナ構造部「一次繊毛」に存在する抗肥満機能を持つ受容体「MC4R」が、加齢に伴って短くなることが判明。さらに、ラットを使った実験で一次繊毛を人工的に短くしたところ、代謝が低下して食欲が増し、体重や体脂肪が増加することも分かったのです。
また、ラットに栄養をたくさん与えると、一次繊毛の短縮が促進することも分かりました。

つまり、加齢に伴う神経細胞の変化によって、脳が「体を太りやすくしろ!」と命令していたというのが中年太りの真相だったということです。

「脳の命令なら防ぎようがない…!」とガッカリしてしまう人もいるかもしれませんが、心配しなくても大丈夫です。同研究では、老齢マウスの食事制限を2カ月行ったところ、一次繊毛が復活することも確認されたからです。

つまり、昔から伝わってきた健康維持の原則である「腹八分」こそが、中年太りを避け、健康を維持する食事のコツだったということ。
30代を過ぎたら、「太りやすい脳」にならないように毎食「ちょっとものたりない」くらいで箸をおくように、心がけていきましょう。

参考)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240307_1

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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