脳のはなし

認知症の危険因子に動脈壁硬化が関係

脳MRIで検出される脳の小さな血管障害である、脳小血管病が、脳卒中や認知症の危険因子であることは知られています。この脳小血管病が、高血圧より動脈壁硬化(動脈スティフネス※)の方が大きく関係することが、琉球大学大学院医学研究科の石田明夫准教授と宮城朋医員、琉球大学病院、沖縄県健康づくり財団らの研究チームによって証明され、アメリカ心臓協会の学会誌『Stoke』で発表されました。

この研究は、沖縄県健康づくり財団の脳ドックに申し込んだ24歳〜89歳の男女1,894人を対象に4つのグループに分けて、脳のMRI画像診断と血圧測定、動脈壁硬化度を調べたものです。

その結果、血圧の高低に関係なく、動脈壁硬化が進んでいる人は進んでいない人に比べて、2倍超の高い割合で脳小血管病を発症していることがわかりました。

※pwvは動脈壁硬化を評価する指標、脈波伝播速度の略

具体的には、動脈壁硬化が進んでいないグループの脳小血管小病の発症率は22〜24%である一方で、動脈硬化が進んでいるグループは55〜56%という結果でした。これらの結果から、動脈壁硬化が脳小血管病に与える影響は、血圧よりも影響が大きい可能性が示されたのです。

研究グループは、これまで高血圧対策が中心であった脳卒中や認知症発症の予防に、動脈壁硬化治療のための新たな開発が必要だと報告しています。これからは血圧だけでなく、動脈壁硬化も検査することが大切だということです。

※動脈スティフネス:動脈の壁が硬くなり伸展性を失うこと。動脈壁硬化ともいい、一般的に脈波伝播速度(PWV)検査で評価し、「血管年齢」としても用いられている。

出典) 琉球大学大学院医学研究所
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/STROKEAHA.123.042512

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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