脳のはなし

お手本を「自分の顔」にすると脳はグンとやる気を出す!?

スポーツで何か新しい動作を覚えるとき、多くの人は手本となる熟練者の動きを参考に見て、イメージをつかんでいると思います。指導者も、まずは自分が手本となる動きをやってみせて、その動きを再現してみるように指示しています。

そのため、スポーツに限らず、仕事や学習についても、「見て学ぶ」「見て盗む」とよくいいますね。まずは手本となるものを視覚でとらえ、それを脳内でイメージすることで、新しい動きを学習するのが、運動を覚えていくセオリーといえるでしょう。

この運動イメージをつかむまでのプロセスにおいて、手本となる動きを行う熟練者の顔を「観察者本人の顔」に返還した映像にすることで運動の学習効果が高まる…そんな新しい事実が、昨今の研究で明らかになりました。

信州大学、早稲田大学らの研究チームが行った実験では、映像内で運動を行う熟練者の顔を観察者の顔に変換する画像編集技術が応用されました。2個のテニスボールを手のひら上で回す動作を、観察者の顔に返還した熟練者が実行し、それを見ながら、観察者は運動イメージを行いました。

その間、観察者の大脳の状態を観察したところ、熟練者の動作を見るときよりも、自分の顔に返還した動作を見た時のほうが、興奮性が増加することが確認されました。

さらに、変換した画像が本人の顔との類似性を増すほど、興奮性は増加することも確認されました。

自分が新しいことをマスターしている映像イメージに対して脳は強く反応し、その活動を高める……つまり、やる気を一気に出す!ということがわかったわけです。

最近では、VRの技術もどんどん発達し、テキストで指示された動画を高度に生成できるオープンAIが登場したことも話題を集めています。

今後、新しいことを学習する際には自分の顔を投影した映像でまずはイメージをつかみ、学習することでその効果を高める…といった学習方法が当たり前になるのかもしれません。

参考)
https://www.naist.jp/pressrelease/240222.pdf(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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