脳のはなし

スキルを上げるには休憩時間も大事

ピアノなど新しいスキルを身につけるには、何度も繰り返し練習することが大事だということは、周知の事実です。
確かにスキルアップのために練習は必須なのですが、ひたすら練習するよりも、練習の間に短い休憩を入れるほうが、スキルが定着しやすいことを2019年にアメリカの国立衛生研究所(NIH)の研究グループが明らかにしました。

ここの研究は、27人の被験者に利き手とは逆の手で、可能な限り早く「4・1・2・3・4」の5桁の数字を10秒間タイピングする練習と10秒間の休憩を35回繰り返し、スキルを習得する過程を高度なスキャン技術である脳磁図※を用いて測定したものです。

研究の結果、タイピングをしている最中よりも、10秒間の休憩が終わるごとに、タイピングが上達していることがわかりました。つまり休憩にこそ重要な意味があるのではないかということです。

そして同研究チームは記憶のメカニズムをさらに解明するため、新たに33名の被験者を対象に同様の研究を行い脳磁図で解析しました。その結果、休憩中の脳内では「4・1・2・3・4」の入力が、タイピング中の約20倍の高速で何度も再生されていることを2021年に明らかにしたのです。また休憩時にタイピング中の脳活動が再生される回数が多い人ほど、その後のスキルが上達することも報告しています。

高速再生は脳の感覚運動領域のほか、記憶にかかわる海馬や嗅内皮質で行われていることも発見したことから、これらの領域で休憩中に必要な記憶をまとめることで、スキルの上達効果を上げているのではないかと説明されています。
ひたすら練習に打ち込むだけでなく、スキルアップには適度な休憩が必要なようです。

※脳磁図…脳内の情報伝達は、神経細胞間での電流のやりとりで行われています。電流が発生すると磁場ができるため、この磁場の変化を捉えて記録し、脳の機能を解析する技術。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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