脳のはなし

「人に会わない生活」で脳が衰える!?

コロナ禍における外出自粛生活が続き、仕事はテレワーク、買い物はwebショップ…といったオンライン主体の生活に慣れてきた人も増えてきたことでしょう。離れて暮らす家族や友人たちとの交流も難しくなり、仕事でもプライベートでも、人と対面してコミュニケーションをする機会は極端に少なくなりました。

そうした中で、何となく言葉が出なくなってきたり、もの忘れがひんぱんになってきて、スムーズに会話ができなくなってきた…という声が増えてきました。これは、人と会わない生活によって「対人コミュニケーション」という刺激が極端に減ったために、脳の働きが低下している可能性があります。

思考したり、予測したり、理性を保ったりするなど、人間らしい高度な働きを行っているのは、脳の「前頭前野」という部分です。人と対話するときもこの前頭前野が活性化することで、スムーズなコミュニケーションを可能にしています。相手が発する言葉だけでなく、顔の表情や声の調子、手足の動きなど、すべてをキャッチして分析・予測するといった、高度な働きを担っているのです。

私たち人間の脳は、こうしたコミュニケーションを行うことで前頭前野を発達させたという一説があるほど、脳をフル回転させるのが、人との対話なのです。自粛生活で、脳を強く刺激する対人コミュニケーションの機会が極端に少なくなったことで、脳が衰えていくことは十分に考えられることです。

最近言葉がスムーズに出てこない、うまく話せなくなってきた、人と話すことが面倒に感じる…などが思い当たる人は、すでに脳に赤信号が灯っていると考えてください。そして、人との対話が減った分、前頭前野によい刺激を与えることを積極的に習慣に取り入れることをおすすめします。

人とのコミュニケーションと同じように、前頭前野が活性化させるのは「かんたんな計算」と「音読」であることが、明らかになっています。毎日、百マス計算をする、新聞をできるだけ速く声に出して読むなどは、効果的な脳トレになります。

また、家族といっしょに暮している方であれば、1日数十分は丁寧に会話をすることをおすすめします。丁寧に、とは「目を合わせて」「相手の様子をよく観察しながら」ということです。相手に視線をあてながら会話をする場合と、そうではない場合を比べると、視線を向けながらの会話のほうが、前頭前野の活性度は高まることが分かっています。そして、よく知った相手からは、過去に会話から得た情報やしぐさなどから、よりたくさんの情報が得られるため、知らない人との会話よりも前頭前野がよく働くことも判明しています。今日からぜひ、はじめてみてください。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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