脳のはなし

内臓脂肪が多い人ほど、認知や脳機能の低下に影響

肥満には皮下脂肪型と内臓脂肪型があります。皮下脂肪型は皮下に脂肪が蓄積している状態で、内臓脂肪型はお腹を中心とした内臓あたりに脂肪がたまる状態のこと。

皮下脂肪型に比べて、内臓脂肪型は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが高くなると言われています。

新たに、内臓脂肪型の人は認知機能の低下や脳の構造異常にも影響することが、花王株式会社ヘルス&ウエルネス研究所と、弘前大学大学院医学研究科の中路重之特任教授らの研究チームによって、2021年に国際学術誌『Brain Sciences』で発表されました。

この研究は、2016~2017年に「弘前市いきいき健診」に参加した65~80歳の認知症と診断された人を除く、2364名を対象に行われたものです。内臓脂肪が多いグループと少ないグループに分けて、認知テストなどのスクリーニング検査「MMSE」を用いて認知機能を評価。脳の構造は、脳萎縮、白質病変、側脳室周囲病変、血管周囲腔拡大、脳出血について、MRIで調べました。

その結果、内臓脂肪が多いグループは少ないグループと比べて、認知テスト(MMSE)のスコアが低く、認知機能が明らかに低下していました。また認知症患者に現れる白質病変や、血管周囲腔拡大が発症していることがわかりました。

内臓脂肪と認知機能の関係性

出典)花王株式会社ヘルス&ウエルネス研究所・弘前大学大学院医学研究科

65歳以上で内臓脂肪が多い人は、認知機能が低下する傾向にあるだけでなく、脳の構造異常も発生していることが明確になったのです。

この結果から、研究チームは内臓脂肪を減らすことは、高血圧などの循環器疾患リスクを減らすだけでなく、認知症リスクを減らすことにも役立つ可能性があると述べています。

内臓脂肪型に多い“ぽっこり”お腹の人は要注意です。生活習慣病だけでなく、認知症予防のために、日頃から内臓脂肪を溜めない食生活や運動などを心がけましょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

※ ご自身の脳についてもっと知りたい方は、川島隆太博士監修の「脳のはなし 6日間無料メール講座」の受講をおすすめします。

  • 脳活動と日常生活の関係性
  • 現在脳科学でわかっている事実
  • 効果的な脳の鍛え方

などを6日間にわたってメールでお伝えします。
ご登録はこちらから