脳のはなし

夜遅い時間帯の夕食のリスクとは?

認知症の発症リスクを高める要因の1つに糖尿病があります。

夕食を食べる時間帯によって、2型糖尿病リスクをさらに高める可能性のあることが、アメリカのマサチューセッツ総合病院とブリガム・アンド・ウィメンズ病院、スペインのムルシア大学の研究チームによって、2022年に学術誌『Diabetes Care』で発表されました。

夜遅い時間帯に夕食を食べると、睡眠に関係するホルモンであるメラトニンの分泌が増えるため、血糖値を下げるインスリンの分泌が抑制され、血糖値が上昇しやすくなります。メラトニンは24時間周期の体内時計を調節する役目があるため、夜遅く食事をすることで、血糖コントロールが乱れやすくなるのではないかということです。

この研究は、スペインの成人845人を対象に、血糖コントロールとメラトニンの関係を調べたもの。参加者は8時間絶食し、その後の1日は早めの時間に食事をとり、2日目は通常の就寝時間の1時間前という遅めの時間帯に食事をとりました。合わせて、参加者に2型糖尿病のリスクを高めるメラトニン受容体の遺伝的変異(MTNR1B)があるかについても調べました。

その結果、早めの時間帯に比べ、夜遅い時間帯に食事をとると、血中のメラトニンの値が平均で3.5倍に上昇していることわかりました。また、夕食を食べるタイミングが遅いと、血糖値を下げるインスリンの値が低下し、血糖値が上昇しやすいことも明らかになりました。

特に、MTNR1Bの遺伝子変異をもつ人は、この遺伝子を持たない人に比べ、血糖値が高くなる傾向にありました。

この結果から研究チームは、夕食は就寝前の2、3時間前にはすませておくことが大事だと報告しています。

特に血糖値が高めの人や、2型糖尿病の人は、血糖値を上げやすい炭水化物中心の食事には注意が必要です。就寝前にジャンクフードや、お酒の後のシメの麺やご飯など炭水化物を食べないように心がけましょう。

40~50代から食事時間に注意することは、糖尿病だけでなく、将来、認知症のリスクを低下させることになるのではないでしょうか。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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