脳のはなし

中年期に食物繊維を多く摂る人ほど、要介護認知症リスクは低下傾向に

いも類や野菜、果物に多く含まれる食物繊維が、腸内細菌によい影響を及ぼすことは知られています。また最近では、この腸内細菌が認知症に関係しているという研究が発表されていますが、これまで食物繊維の摂取量と、その後の認知症発症の関係について調べた研究はありませんでした。

2022年に筑波大学医学医療系の山岸良匡教授らの研究グループが、中年期の食物繊維摂取量が高齢期の要介護認知症発症のリスクを低下させる可能性について明らかにし、医学誌『Nutritional Neuroscience』で発表しました。

この研究は、秋田、茨城、大阪の住民で、1985〜1999年の間に栄養調査に参加した40〜64歳の約3,700名を対象に、2020年まで最大21年間にわたり追跡調査したものです。

調査では、⾷事調査も行い、ある1⽇の⾷事中に含まれる⾷物繊維の摂取量と要介護認知症リスクとの関連を分析。分析は、食物繊維の摂取量が上位25%、50〜75%、25〜50%、下位25%の4つのグループに分けて行われました。

その結果、食物繊維下位25%のグループに対して、上位25%のグループの認知症リスクの比率は、0.74であり、統計学的に優位な関連性があることが明らかになりました。これは、食物繊維を多く食べる人は、認知症を発症する確率が3/4になるということを意味しています。

また、食物繊維のうち水溶性食物繊維※について調べると、食物繊維摂取量下位25%のグループに対して、上位25%のグループは、要介護認知症のリスクが0.61倍とより強いリスク低下傾向が見られました。
これらの結果から、中年期に食物繊維(特に水溶性食物繊維)の摂取量が多い人ほど、要介護認知症発症リスクが低いということがわかりました。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年度)によると、18〜64歳の場合食物繊維の1日の摂取目標量は女性18g以上、男性21g以上と定められています。しかし、全ての年代においてその食物繊維の目標量に達していないことがわかっているので、日頃から食物繊維の多い食事を摂るように心がけることが大切です。

※食物繊維は、水に溶けない性質の「不溶性食物繊維」と、水に溶ける性質の「水溶性食物繊維」があります。水溶性食物繊維は、いも類、野菜類、海藻類、大豆や大麦などに多く含まれます。

出典)筑波大学プレスリリース(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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