脳のはなし

過去を思い出す回想法は、脳の健康維持に効果大

認知症の進行を抑える療法として、回想法というのがあるのをご存知ですか。

回想法とは、写真や音楽、昔使っていた懐かしいものに触れて過去を振り返り、昔の経験や思い出を語り合う心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した療法で、認知症だけでなく、うつ病や終末期医療など様々な現場でも取り入れています。

過去を思い出すという作業は、気持ちが後ろ向きになるように思われがちですが、そうではありません。

昔を懐かしむ効果には、まず昔の自分を思い出すことで、楽しい気持ちになり、自分に自信を持てるようになることがあります。そのほか、脳を活性化し脳の健康を維持すること、前向きな気持ちになって生きる力をつけること、ストレスを解消し元気になること、幸福感が得られることで気持ちが安定する効果があることから、認知症などのリハビリテーションなどで役立つと言われています。

懐かしさが気持ちを前向きにし、元気をとり戻す理由は、脳幹の中脳にある中枢神経系から分泌されるドーパミンが関係しています。ドーパミンが分泌されるきっかけとなるのは、「報酬」です。喜びや達成感といった欲求が満たされた時や、満たされるとわかった時に活性化し、ドーパミンが分泌されます。また、懐かしさを感じると活性化する脳の領域は、中脳の黒質や腹側被蓋野(ふくそくひがいや)で、どちらも「報酬」に関係する場所であることが研究でわかってきています。

つまり、懐かしさを感じるだけで、脳内にドーパミンが分泌され、気分がよくなって元気になるというわけです。

懐かしむという行為は、高齢者や認知症の進行を抑えるだけでなく、中高年の脳を活性化させ、ストレスを解消する効果があると言われています。

仕事や人間関係で疲れた時は、帰宅後、家族と昔話をしたり、学生時代や子どもの写真、思い出の音楽に触れたりしてみてはいかがでしょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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