脳のはなし

糖尿病は予備軍の段階でもアルツハイマー型認知症のリスクを高める原因に

糖尿病が認知症の発症リスクを高める危険因子であることは、広く知られています。

認知症は脳にたんぱく質のアミロイドβが溜まることが原因の1つとわかっていますが、糖尿病になるとインスリンの分泌が不足するため、アミロイドβが分解されずに脳に蓄積しやすくなるからです。

2022年に糖尿病だけでなく、血糖値の高い状態が続いている人でもアルツハーマー型認知症の発症リスクが高くなることが、金沢大学の山田正仁名誉教授と篠原もえ子特任准教授、九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授の研究グループによって、医学誌『journal of Alzheimer’s disease』で明らかにされました。

この研究は、全国8地域からなる認知症の大規模調査で2016年から2018年に調査に参加した10,214人を対象に、糖尿病の有無、血糖コントロールの指標、HbA1c(ヘモグロビン) ※1値、GA(グリコアルブミン) ※2値と、アルツハイマー型認知症と血管性認知症との関連を分析したものです。

その結果、HbA1c値とGA値が高いと、アルツハイマー型認知症の発症に有意に関連していることがわかりました。HbA1Cが5.7~6.4%と血糖値が高めのいわゆる糖尿病予備軍の人でも、アルツハイマー型認知症のリスクが1.3倍であることが明らかになりました。

2019年、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性で19.7%、女性で10.8%、約1000万人と報告されています。
血糖値が高い人は、糖尿病だけでなく認知症予防のためにも生活習慣を見直し、血糖値を適切にコントロールすることが大切です。

※1ヘモグロビンとブドウ糖が結合したもの。HbA1cは過去1〜2か月平均血糖を表すと言われています。
※2血清アルブミンにブドウ糖が結合したもの。過去の2〜4週間の平均血糖を反映しており、より短期の血糖コントロール状態が分かると言われています。

HbA1cレベル別のアルツハイマー病と血管性認知症罹患の調整オッズ比

HbA1c が5.7-6.4% の血糖値高めの糖尿病予備軍の人は、そうでない人と比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが1.30倍高いことがわかりました。

出典)金沢大学・九州大学大学院(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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