脳のはなし

育児経験が脳を進化させる!?

子どもを育てる中で、愛情ホルモン「オキシトシン」が分泌されたり、必然的に保育スキルが上がったりすることは知られています。しかし、実は育児経験によって「脳も作り替わる」ことが、昨今の研究で明らかになりました。しかもこれは女性に限らず、男性にも起こる現象であることが分かったのです。

イスラエル・バル=イラン大学の研究チームの発表によると、「育児をすることで、脳の特定の神経回路が目覚め、脳活動を変化させることが分かった」ということです。彼らは初めて子どもを持つ異性愛、同性愛の親89人の被験者の脳を観察・研究を行いました。

結果、異性愛のカップルにおいては、女性の場合は主に感情系、報酬系と結びつく脳の領域がより活発になり、男性の場合は経験や社会的次元と結びつく脳の領域がより活発になることが分かりました。
また、同性愛の父親たちの場合は、女性たちと同じ感情との結びつきが強い脳の領域が活発になっていました。

研究者は「異性愛の母親と同性愛の父親が同じように脳を変化させるということは、脳の変化が妊娠・出産の経験によるホルモンの変化の影響というよりは、育児という経験によって生み出されていることを示唆している」と語っています。

ちなみに、こうした脳の変化は、子どもと接する時間の多少と相関していることも分かりました。

「親脳」への進化は、子どもとの接触の多さで成される――この研究結果は、そんなことを示唆しています。「男だから」「女だから」といったバイアスから離れて、子どもとたくさん寄り添うことが、より育児に適した脳をつくることにつながる。そう頭に留めながら、育児を楽しんでいきましょう。

参考)https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1402569111

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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