脳のはなし

納豆は女性の認知症予防に効果的

大豆製品にはイソフラボンが多く含まれていて、認知機能の改善に効果があることが報告されてきました。けれども、これまでの疫学研究では、大豆製品や豆腐などの個別食品摂取量、認知機能との関連については、一貫した結果が得られませんでした。

2022年に国立研究開発法人国立がん研究センターの予防研究グループは、多目的コホート研究(JPHC-Study)※において、大豆製品と、納豆や味噌、豆腐などの個別の大豆食品・イソフラボンの摂取量などの摂取とその後の認知症発症リスクの関連について調査し、医学誌「European Journal Of Nutrition」で発表しました。

この研究は、1995年と1998年に秋田、長野、沖縄、茨城、高知の保健所管内に在住していた45~74歳の4万1,447人を対象に、2016年まで追跡して調査し、認知症のリスクとの関連を調べたものです。

138食品が含まれる食事アンケート調査票から、総大豆製品(納豆、みそ、豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐、油揚げ、豆乳)、納豆、みそ、豆腐(豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐)の個別大豆食品のそれぞれのイソフラボンの1日当りの摂取量を計算。参加者をそれぞれの摂取量で5つのグループに分け、摂取量の多いグループと少ないグループを比較し、その後の認知症リスクを調べました。追跡調査中に4,911 人が認知症と診断されました。

グラフ)大豆製品・イソフラボン摂取と認知症リスクとの関連

グラフ)納豆摂取量と認知症リスクとの関連(年齢層別・女性)

その結果、男女ともに、総大豆製品やイソフラボンと認知症のリスクの関連はみられませんでした。しかし、個別食品でみると、男性は関連がありませんでしたが、女性では納豆摂取が多いグループで認知症リスクが低下する傾向があることがわかりました。特に、60歳未満の女性では、納豆摂取と認知症リスク低下が統計学的に有意にあることが明らかになりました。

納豆にはイソフラボンも多く含まれていますが、ナットウキナーゼやポリアミンといった酵素が含まれています。これらの酵素は、動物実験において認知症のリスクとなるタンパク質、アミロイドβの蓄積を抑制することが報告されていることから、認知症のリスクの低下に影響した可能性があるのではないかということです。

これまで欧米での研究では、イソフラボンと認知機能改善の関連が報告されていますが、今回の研究では総大豆食品やイソフラボン摂取と認知症リスクとの男女ともに関連がみられない明確な理由は明らかになっていないことから、今後も研究が必要だと述べています。

※JPHC-Studyは、保健所や国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関などが中心となって、日本人の生活習慣病とがん、2型糖尿病、脳卒中、脳梗塞などの病気の関係を明らかにし、健康寿命を伸ばすことを目的として行われている研究です。

出典:国立研究開発法人国立がん研究センター(JPHC-Study)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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