脳のはなし

連休明けに調子が悪いのは社会的時差ぼけが原因

休日にゆっくり休んだはずなのに、休み明けに体がだるい、気分が落ち込む、という経験がありませんか? その原因は、社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)かもしれません。

時差ぼけの原因は、体の中にある体内時計がうまく機能しなくなることにあります。人は細胞一つ一つに体内時計を持っていて、それを束ねているのが脳内にある時計細胞と呼ばれる神経細胞の集まり。この時計細胞は、脳の視床下部の視交叉上核という領域にあることがわかっていて、時計細胞が24時間周期で遺伝子発現や生理的反応を繰り返し、このリズムのタイミングを細胞の集団で合わせることで、体内時計が機能するのです。

社会的時差ぼけは、休日に睡眠不足や朝寝坊や、寝だめなどの不規則な生活により、太陽を浴びる時間が遅くなって体内時計が錯覚するため、海外旅行に行った時と同じような時差ぼけの状態になりやすくなると考えられています。
これまでの研究では、体内時計が狂うとインスリン分泌に悪影響し、2型糖尿病などに罹患する可能性が高くなるほか、空腹中枢を刺激するホルモンが夜遅い時間に分泌されること過食による肥満になると言われてきました。

さらに、2022年にアメリカのロチェスター大学医療センターの研究グループによる、マウスを使った研究で、肺腫瘍の増殖と体内時計の乱れとの関連性を発見し、科学誌『Science Advances』で発表しています。

研究グループによると、不規則な睡眠時間や食生活など一貫性のない生活習慣をしていると体内時計が乱れやすく、HSF1 として知られるがんの特徴遺伝子が肺腫瘍を引き起こす可能性を高めるということです。肺は体内時計の制御下にあるため、体内時計の乱れに特に弱いと言います。

多忙な働き盛りの世代は、休日の朝寝坊や寝だめをしがちですし、食事時間も不規則ですが、社会的時差ぼけになりやすいので、できるだけ休日も平日を同じ生活習慣を心がけることが大切です。

出典:アメリカ ロチェスター大学医療センター

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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