脳のはなし

ガーデニングにストレス解消の効果も

ストレスが脳に悪影響を及ぼすことは、これまでの様々な研究で明らかになっています。
人はストレスにさらされると、ストレスに対抗するために体内でコルチゾールの分泌が増えます。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールは、本来、抗ストレス作用以外に脂肪組織の分解や、炎症を抑える働きがあるなど、生命を維持するために欠かせないホルモンです。

これまでコルチゾールは生命を維持する重要なホルモンと考えられていましたが、脳内ではコルチゾールが増えると炎症が引き起こされ、脳の海馬や前頭前野などの脳細胞に悪影響を及ぼすことがだんだんとわかってきました。

京都大学大学院渡邉啓太特任准教授の2017年の研究によると、発症がストレスによるうつ病は、ストレスの指標が高くなる早朝のコルチゾール値が高いほど、海馬が変形していて、脳内の情報を伝達している白質繊維に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。

また別の海外の研究では、健常者であっても、慢性的なストレスなどでコルチゾールが上昇していると、脳の海馬容積が減少するなど脳に悪影響を及ぼすという報告もあります。

このようなストレスによる脳の障害を予防するためには、ストレスの対処法を身につけておくことが大事になります。

対処法の代表的なものには、家族や友人、動物とのふれあい、瞑想、ウォーキングやランニングなどの運動があります。

2023年に自然科学誌『Lancet Planetary Health』で発表されたアメリカのコロラド大学の研究よると、ガーデニングにもストレス解消に効果的であることが報告されました。この研究は、291人のガーデニングをしない41人の成人を対象に、対象者の栄養摂取量とメンタルヘルスなどについて定期的に調査するとともに、活動量を測定するモニターを着用してもらい調べたものです。

研究の結果、ガーデニングを始めた人は、より多くの食物繊維を摂取し、より多くの身体活動を行っていることがわかりました。さらに、ストレスや不安のレベルがガーデニングをすることで大幅に低下したことも明らかになりました。

運動が苦手、続かないという人は、ストレス解消のためにガーデニングに挑戦してみるといいかもしれません。

出典:
渡邉啓太著『健康脳-MRIから見えてきた認知症予防』(マイナビ新書)
アメリカ コロラド大学

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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