脳のはなし

仲間と運動する方が認知機能低下予防に効果的

高齢者の認知症予防における運動の有効性は広く知られています。しかし、認知症予防に社会交流の充実については、十分な検討はされていませんでした。
近年の研究により、仲間と行う運動のほうが1人で行う運動よりも、抑うつや死亡などの健康指標に好影響を及ぼすことが報告されていましたが、やはり認知機能への影響については十分に検討されていませんでした。

そんな中、筑波大学体育系の大蔵倫博教授と、山口県立大学社会福祉学部の角田憲治准教授らの研究グループが、運動は1人で行うよりも、仲間と一緒に行った方が、認知機能の低下を予防するためにより効果的であることを明らかにし、2023年に学術誌『Archives Gerontology and Geriatrics』で発表しました。

この研究は、平均年齢76.9歳の男女4,358名を対象に、「1人で行う運動や仲間と行う運動は、どの程度実践されているのか」、また非実践者、週1回、週2回以上の「どちらの運動が認知機能障害の抑制効果があるのか」について、4年間にわたり追跡調査したものです。

その結果、被験者がより多く実践しているのは、1人で行う運動であり、週2回以上の実践者が4割を超える一方で、仲間と行う運動の週2回以上の実践者は2割未満にとどまることがわかりました。

また、認知機能障害の抑制効果については、どちらの運動についても週2回以上の実践では、統計的な抑制効果が認められました。効果の大きさという点では、1人で行う運動が22%の認知機能障害のリスク減に比べ、仲間と行う運動が34%とより強い抑制効果があることが明らかになりました。
これらの結果から、高齢者の認知症予防においては、1人で行う運動だけでなく、仲間と行う運動をする機会を増やしていくことが重要だということが示唆されました。

研究グループは、運動での仲間の具体的な構成については考慮できていないことから、今後は、運動中の他者との関わり方による認知機能への影響の違いを検討する必要があると報告しています。

図)1人行う運動と仲間で行う運動の認知機能障害の抑制効果

各運動の非実践者に比べ、週2回以上の実践者は、認知機能障害の発生リスクが1人で行う運動は22%、仲間と行う運動は34%低くなることがわかりました。

出典:筑波大学体育系・山口県立大学社会福祉学部(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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