脳のはなし

アミロイドベータ除去で認知症リスクが下がる

アルツハイマー型認知症患者の脳内に沈着している「アミロイドベータ」と呼ばれるタンパク質を除去すれば、病気の進行を止めることができる。1990年代以降、多くの科学者はそう指摘してきました。その根拠となっているのが、脳に沈着したアミロイドが神経を変性させ、認知症の引き金になっているとする「アミロイド仮説」です。

そして先般、製薬会社のエーザイとバイオテクノロジー企業のバイオジェンが共同開発した新しいアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が、世界で初めて臨床試験で認知機能の低下速度を27%遅らせたことを発表。レカネマブが脳内のアミロイドベータを除去することで、認知機能の低下を抑制したことが、科学的に実証されたということです。

レカネマブはアメリカ食品医薬品局に治療薬として迅速承認され、たちまち、世界中の研究者が注目することとなりました。
「アミロイドベータがアルツハイマー型認知症の原因」というのは、長らく仮説として見られていましたが、この結果から「もはや定説になった」とみる研究者も多いよう。
同時に「早期発見、早期対策、早期治療」も、確たる定説と認識してよいでしょう。

そして、アミロイドベータの蓄積を防ぐ手立ては薬だけではありません。私たち自身でできることもたくさんあるのです。それは次の通りです。

  • ① 良質な睡眠を十分にとること
    アミロイドベータが排出されるのは睡眠中。睡眠不足になると脳内に留まり続けてしまいます。
  • ② バランスの良い食事
    アミロイドベータを排出するためには「インスリン分解酵素」が必要といわれています。ところが、甘いモノや炭水化物を取り過ぎると血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されてしまいます。すると分解酵素が大量消費されるため、アミロイドベータを分解する分がなくなってしまうのです。そのため、血糖値を急上昇させる食事は禁物。野菜やタンパク質もバランスよくとりましょう。
  • ③ 適度な運動を習慣にすること
    運動は血糖値をあがりにくくし、インスリンの節約につながります。脳の血流を良くする効果も。運動習慣のある人は認知症発症リスクが大幅に下がることが分かっています。

まずは自分でできる生活習慣の改善から、脳内のアミロイドベータ蓄積を予防していきましょう。薬に頼るのは最後の手段です。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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