脳のはなし

難聴は認知症発症リスクが高い傾向に

高齢者になると多くなる難聴。難聴は、人とのコミュニケーションや生活に支障をきたすだけでなく、時間の経過とともに認知症のリスクを高める要因の一つとして問題になっています。アメリカでは、70 歳以上の2/3の人が難聴で生活や病気などに影響があると言われているほどです。

そんな中、重度の難聴を放置すると認知症になる可能性が高いことを、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究グループが2023年に『Journal of the American Medical Association』で発表しました。

この研究は、2,413人の高齢者のデータをもとに、2011年から調査したものです。

その結果、中度、もしくは重度の難聴のある高齢者の認知症の有病率は、正常な聴力をもつ高齢者に比べて61%高いことがわかり、難聴の重症度と認知症との明確な関連性が示されました。

また、中等度、重度の難聴があっても、補聴器を使用していた高齢者は、認知症の有病率は32%低下することが示されたことで、補聴器を使用することで認知症の予防につながることを明らかになりました。

これらの結果は、難聴が時間の経過とともに認知症のリスクを高める要因であるだけでなく、難聴の治療により認知症のリスクが低下する可能性があることを示す、これまでの国内外の研究と一致しています。

難聴は、早めの治療と補聴器の使用が、将来の認知症予防にも大切だということです。

出典):アメリカ ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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