脳のはなし

マグネシウムの摂取が認知症予防に

マグネシウムは、人体に必要なミネラルの一種。マグネシウムの約60%が骨に、残りの約40%が筋肉や脳、神経に存在していて、骨を形成するだけでなく、生命維持に必要な代謝を助ける働きをしています。

これまでの国内外の研究では、長期にわたるマグネシウム不足が、骨粗鬆症や心疾患、糖尿病のリスクを高める可能性があることは示唆されてきました。また近年、海外の研究報告では、マグネシウムの摂取量を1日100mg増加させることで血圧降下や、2型糖尿病の発症リスクを低下させる可能性があるという報告もされています。

そして、2023年に毎日の食事でマグネシウムを十分に摂っていると認知症予防の可能性があるとオーストラリア国立大学の研究グループが、医学誌『European Journal of Nutrition』で発表しました。

この研究は、イギリスの大規模研究であるバイオバンクに参加した40〜73歳の6,000人以上のデータをもとに解析したものです。

研究の結果、食事でマグネシウムを多く摂っている人は、脳容積がより大きい傾向にあり、1日のマグネシウム摂取量が41%増加すると、加齢にともなう脳の収縮が少なくなる可能性があるということです。

さらに、マグネシウムを1日に550mg摂っている人は、350mg摂っている人と比べると、55歳に達するまでの脳年齢が約1歳若いことが明らかになりました。

日本人のマグネシウムの摂取量の目安は、50~64歳の男性で370mg、女性で290mgと言われています。けれども2019年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、50〜59歳マグネシウムの1日あたりの平均摂取量は、男性265mg、女性233mgと、目安よりも摂取量が下回っているので、注意が必要です。

マグネシウムは、あおさやワカメなどの藻類、干しエビやアサリ、金目鯛などの魚介類、発芽玄米やライ麦パンなどの穀類、ホウレンソウやゴボウなど野菜類、納豆や豆腐、油揚げなどの豆類、ナッツ類に多く含まれています。

健康な人であれば、食事でマグネシウムを摂りすぎても尿として排出されるので、摂り過ぎの心配はありません。ただし、サプリなどの場合、下痢の原因になることがあるので、マグネシウムは、サプリよりも食事で摂るように心がけましょう。

出典)
オーストラリア国立大学
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度)」(PDF)
厚生労働省「国民健康・栄養調査2019年度」(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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