脳のはなし

「漢字の書き取り」で文章力が向上する

昨今は、テクノロジーの発達するにつれて、昔ながらの「詰め込み教育」の是非が問われるシーンが増えてきました。
AIが進化した今、「記憶させる学習に意味はあるのか」「漢字を一つ一つ書き取って覚えるなんてナンセンスではないのか」といった声が勢いを増してきたように思えます。
脳科学の知見からこれらの疑義について答えるとすれば、「記憶力を鍛えることも、漢字の書き取りをすることも、人の能力を高めることにつながる」となります。

まず、記憶力を鍛えることは、脳の「前頭前野」を直接的に活性化させることが分かっています。前頭前野は思考力や判断力、創造力といった、人間を人間たらしめる高次な活動を司る、脳の重要部位。前頭前野を活性化させることは、すなわち、人間だからこそ持つこれらの能力を一気に底上げすることにつながるといってよいでしょう。

また、漢字の書き取りについては、京都大学の研究グループが、その効果を明らかにしています。中高生719名の漢字検定、文章読解・作成検定の成績データを解析したところ、書字の力が文章作成能力に直接影響することが分かったのです。
ちなみに、同研究グループは以前、大学生を対象に同調査を行ったときにも、漢字の書字の力と文章力との特異的な関連性が明らかになったといいます。

この結果を受け、研究者は「漢字学習によって、言語・言語・認知能力やそれらの基盤にある脳神経ネットワークなどにどのような効果を及ぼすのかを検証することが今後の課題」と語っています。

どんなに便利なテクノロジーが登場したとしても、人の脳の可能性を引き出すうえでは、「読み・書き・計算」といった昔ながらの勉強法に軍配があがるようです。めんどうで無駄に思える勉強法こそ、実は脳が大張り切りしているということですね。

参考):
https://www.nature.com/articles/s41598-020-59852-0

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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