脳のはなし

脳卒中後の血糖値が高い人は認知機能低下が加速

アメリカのミシガン大学の研究グループが、脳卒中を発症後に血糖値が高い状態のままでいると、認知機能低下の速度が早まる可能性があることを2023年に『JAMA Network Open』で発表しました。

これまでも脳卒中の発症後は、認知症発症リスクが最大50倍に増加するといわれていましたが、そのリスクを抑制する治療方法はほとんどありませんでした。

研究グループは認知機能の低下させる要因を調べるために、脳卒中を発症した男女986人の空腹時血糖値(10時間以上食事を摂っていない状態の血糖値)や血圧、LDL-C(悪玉コレステロール)の累計平均値と、認知機能や実行機能・記憶力について調査しました。

その結果、空腹時血糖値は累積平均値が10mg/dL高いごとに、1年間での総合的な認知機能が-0.04ポイント速く低下することがわかりました。

さらに、脳卒中の発症から12年の時点では、累積平均血糖値が最も高いグループの認知機能スコアは42.9ポイント、累積平均血糖値が最も低いグループの認知機能スコアは45.7ポイントで、2.8ポイントの差があることが明らかになりました。ただ、今回の研究では、脳卒中になった後の累積平均血糖値と、実行機能・記憶機能に有意な関連は認められませんでした。

これらの結果から、研究グループは脳卒中発症後の認知機能を維持するには、血糖値のコントロールが重要であり、その研究結果が今後の治療に役立つ可能性があると述べています。

出典):アメリカ ミシガン大学
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2805003

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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