脳のはなし

認知症にも関係するビタミンD不足が問題に

ビタミンDは、体内へのカルシウムの吸収や骨の成長の促進、血中カルシウム濃度の調整のほか、免疫機能を調整する重要な働きをする栄養素の1つです。

2022年のアメリカのタフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢人間栄養研究センターの研究グループの報告によると、脳内のビタミンDの量が多い高齢者は明晰な頭脳が維持される可能性が高いと発表されていて、脳にとっても大切な栄養素です。

けれども、東京慈恵会医科大学の研究グループが2023年に医学誌『Journal of Nutrition』で発表した研究によると、日本人の98%がビタミンD不足であることが明らかになりました。

この研究は、2019年4月~2020年3月に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施したものです。

その結果、ビタミンDの濃度は、女性で7~30ng/mL、男性で5~27ng/mL、全体の平均で6~29ng/mLとなり、健康な人の98%がビタミンD基準濃度である30 ng/mLに達していないことがわかりました。

グラフ)血清中のビタミンD量ごとの人数

さらに、測定されたビタミンDのほとんどは、サケやサンマなど魚の動物由来、あるいは日光にあたりビタミンDを生成する日光由来のビタミンD3であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2は、ほぼ検出されませんでした。これは、日本人の食生活の変化によって、ビタミンD2が摂取されなくなったと推測されています。

ビタミンDは、野菜や豆などにはほとんどなく、シイタケやキクラゲのキノコ類のほか、サケ、サンマ、うなぎなど魚類に多く含まれています。

高齢者にとって、骨粗鬆症や骨折、認知症などの予防につながるビタミンDの摂取はますます重要になっています。ビタミンD不足を解消するためにも、日頃から積極的に摂るように食生活を見直すことが大切です。

出典):東京慈恵会医科大学(PDF)
アメリカ タフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢人間栄養研究センター

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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