脳のはなし

精神疾患リスクを高める思春期の睡眠不足

現代人のライフスタイルが夜型へ移行するにしたがって、大人だけでなく、睡眠に問題を抱える子どもたちも増加傾向にあるといいます。受験勉強や習い事、テレビやゲーム、インターネットによるSNSや動画の視聴などで、睡眠時間を削ってしまい、睡眠不足に陥っている子どもたちは非常に多く、日本の中学生の平均睡眠時間はアメリカの中学生よりも約30分、ヨーロッパ諸国よりも90分短い、約7時間といわれています(「子どもの睡眠と脳の発達 学術の動向【大川匡子・2010】」)。

小中学生に必要な睡眠時間は8~10時間といわれていますから、慢性的な睡眠不足に陥っていることは間違いないでしょう。

こうした発達段階の睡眠不足が「生涯にわたってメンタルヘルスに影響が出る可能性がある」と示したのが、イギリス・ブリストル大学の研究チームです。

同論文では、10歳から20歳までの思春期の脳は、慢性的な睡眠不足にさらされることで脳の神経細胞が過剰に刈り込まれる可能性を高めたり、思考や感情コントロールに関わる脳の「前頭前野」の形成に影響することが指摘されています。そのため、うつ病や統合失調症といった精神疾患の発症リスクを高めることが指摘されています。

つまり、思春期に十分な睡眠をとることは、生涯にわたってメンタルヘルスを健全に保つことにつながるということです。

もちろん、大人の脳にとっても、十分な睡眠は非常に重要な健康ファクターとなります。時間になったらすべての端末はオフにして、大人もいっしょにベッドに入る……そんな家庭での習慣づくりが、子どもたちの脳と心の健全な発達につながるはずです。

参考):https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301008222001241

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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