脳のはなし

ドラム演奏で認知機能を簡単にスクリーニング

これまでも腕や手の上肢運動機能の低下は、認知機能の低下と関連することが報告されています。けれども重度の認知症になると、運動麻痺がないのにも関わらず運動機能に障害が生じることが多いため、正確に認知機能の評価をすることが困難でした。

そんな中、東京大学先端科学技術研究センター身体情報学分野の宮﨑敦子特任研究員と檜山敦特任教授らの研究グループは、認知症患者がドラムを叩いているときの腕の動きによって、運動機能評価ができる腕時計型のウェアラブルデバイスを開発しました。そしてドラムを叩く動作から認知機能を評価することに成功しました。

この研究では、ドラムを叩くとドラムスティックがドラムから跳ね返るため、簡単に自分の腕を何度でも上げることができるというドラム演奏の長所を活用したもの。平均年齢96歳の認知症高齢者16名を対象に、20分間のドラムセッション中の腕の動きを測定しました。

イラスト)ドラム演奏中の腕の動きの計測

その結果、ドラム演奏中の腕の挙上角度が握力と相関していることがわかり、腕時計型のウェラブルデバイスが上肢運動機能を測定するための有効な評価方法であることわかりました。

次に、ドラム操作が認知症と関連しているか調べると、認知症が重いほどドラムを叩く腕が上がっていないことから、ドラムを叩く腕の角度と認知症の重症度は相関することが明らかになったのです。

認知症に関連する運動機能を特定するこれらの方法は、認知機能低下を早期発見できるだけでなく、認知症の症状の重い人でも重症度のスクリーニングに使うことが可能になります。この手法が広く普及すれば、認知症の早期発見や重症化の抑制、治療効果の評価など、認知症治療やケアにおいて大きな貢献が期待できるということです。

出典)東京大学先端科学技術研究センター
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fresc.2023.1079781/full

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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